世界のヨガと比較して見えた日本発祥の沖ヨガの特徴について

インド 日本

ヨガにもたくさんの種類があります。みなさんもホットヨガや今流行りのマタニティヨガなどはご存知の方もいらっしゃると思います。では今オーストラリアなどでじわじわと流行してきている「禅-Zen-ヨガ」なるものをご存知でしょうか?実はその「禅-Zen-ヨガ」の正体とは日本の戦後すぐにできた日本独自の文化を取り入れた一つのヨガの流派「沖ヨガ」なのです。

沖ヨガとは

インド ヨガ

沖ヨガはユネスコ派遣奉仕員であった沖正弘(1921〜1985)によって創設されました。彼はヨガに日本独自の文化を取り入れた沖ヨガの創設者であり、また当時ヨガに対しての認知が0であった日本でブームを起こした立役者でもあります。一般的に沖ヨガと呼ばれていますが、正式には「求道ヨガ」であり、「沖道(オキドウ)」と呼ばれることもあります。広い視野で客観的に真理を見極める力をつける「求道」のための沖ヨガは、現代の日本に合ったヨガスタイルを確立しました。彼は1960年に日本ヨガ協会を設立し、真理探究を深める沖正弘の教えは、戦後昭和の日本人の心に大きな影響を与え、ヨガを日本に広める原動力となりました。ハタヨガ、ラージャヨガなどインドの伝統的なヨガのみでなく、陰陽道、禅、神道、中医学、マクロビオティック(自然食)といった日本や中国など東洋の修行法・鍛錬法・健康法を融合した内容で、「生き方をヨガにする」という一生涯の目的に向っています。

沖ヨガの特徴

沖ヨガでは総合的・生活的で多彩な行法を行います。基本ポーズ、クリヤ、呼吸法、瞑想法、武道など。日本の「道」の文化は、生活に活かされている姿をより本質としていますが、沖ヨガにおいても体の法則や心の法則を掴み、自己の生活に活かして、自身の生活そのものをヨガすることを本旨としています。各種のポーズや呼吸法もいくつかの特徴がありますが、なんといっても最大の特徴は個性開発を大切にしているという点です。一人一アサナ、一人一呼吸法、一人一食事法、一人一瞑想法であり、それが可能になる原理を説いています。一人一人が自分のヨガを確立して行ける方法と考え方があるのです。個性を活かした生き方をすることが、この世に人間として生まれた価値であるという考え方に基づいています。

世界のヨガとの比較

冒頭でも述べたようにヨガにもたくさんの種類があります。そういった数多くあるヨガと沖ヨガの違いとはなんなのでしょうか?いくつか例をあげて比較してみましょう。

ホット・ヨガ

ホット・ヨガは、気温40度以上、湿度60パーセントという蒸し風呂状態の中で90分間、ハタ・ヨガの28のポーズ(アメリカでは26)を続けて行うことで、体の機能を本来の姿に整える目的で行われるものです。1970年代にできたヨガなので、女性の痩せたい、ダイエットしたいという要望を強く反映している感じもします。柔軟性が格段に上がる暖かい環境で、たっぷり発汗して老廃物の排出を促し、体内をクリアな状態へ導くホットヨガ。好循環を体質として根付かせることで、ダイエットや骨盤矯正、リフレッシュ、アンチエイジングなどすべての女性の願いを叶えることができるのも、ホットヨガの魅力です。

マタニティ・ヨガ

マタニティ・ヨガとは、もともとその名のとおり妊娠中の女性のために発案されたヨガで、数あるヨガのスタイルの中でも特に安定期に入った妊婦さんのために発案されたものです。マタニティ・ヨガにおける効果とは妊娠中に生じる様々な体の不調(腰痛、むくみ、便秘など)の緩和や筋肉が柔軟になり、精神統一もしやすくなるため、心身ともに最高のコンディションで出産に臨むことができるようになるなど妊娠中に生じる心身の不調の緩和、そして安産にも役立つということで、妊婦さんたちの間に徐々に広まってきています。マタニティ・ヨガは、主に、妊婦さんにリラクゼーションと精神の安定をももたらすので、妊婦さんだけでなく、お腹の赤ちゃんにも良い影響を与えることが期待できるといわれています。

Aヨガ

Aヨガの「A」には、Awareness(気づき)、 Awakening(覚醒)、Athletic(運動)、Anti-Aging(アンチエイジング)という4つの意味があります。アメリカでヨガを経験したアスレティックトレーナーが、スポーツ選手のメンタル面・フィジカル面に用いる事ができるではという発想から生まれたものです。自己の身体を認識し傷害、精神的・内科的疾病の予防を促し、また早期回復の為に人間が本来持つ自然治癒力を高め、身体の中から心身共にコンディショニングレベルを向上する方法として、実際に多くのアスリートがこのAヨガを体験しました。

結果

これらは数多くあるヨガのなかでも一部にすぎませんが、古くからあるヨガの中では二つとも新しく出来た新興流派の部類に入ると思われます。この二つをみてもわかるように痩せたい、体を鍛えるなどといった要望を強く反映したホットヨガや妊娠中の女性のリラクゼーションと精神の安定を目的としたマタニティヨガ、アスリートのためのAヨガなど新興流派は現代の人たちの願望にあわせた結果を重視する傾向にあります。しかし戦後に創設されたヨガの歴史からみるとこれもまた新興流派と言っていい沖ヨガではこういった「誰か」のためのものというのではなく、沖ヨガをやったからといってなにか目に見える効果があることはありません。沖ヨガとはひとりひとりが各々のヨガを見出すことができるような自身の生活そのものをヨガにすることを重視しているからです。目先の結果よりももっと潜在的な個人開発により個性を活かすことが人間として生まれた価値であるという考えを啓蒙することにつとめています。

伝統的なインドヨガとの共通点

India's Prime Minister Narendra Modi, right, and Japan's Prime Minister Shinzo Abe shake hands before their talks at the state guest house in Tokyo Monday, Sept. 1, 2014. (AP Photo/Toru Hanai, Pool)

このように他の新興流派と比べると沖ヨガは特に異色を放っています。それは創設者である沖正弘のユネスコ派遣員としてインドに滞在したことがある経験が由縁であると言われています。彼は身体的な面での有用性はもちろんのこと、特にヨガを通しての精神面において価値を見いだしました。「動物、植物、山にも川にも、石にすら、すべてのものにエネルギーがあり、それは全部同じエネルギーである」というヨガの基本的な考えは日本の神道における「万物には八百万の神が宿る」という精神と似通った点があるというのは過言でしょうか。そのようなヨガの考えに日本や中国など東洋の修行法・鍛錬法・健康法を融合させたのが沖ヨガです。つまり沖ヨガは新興流派にも関わらず伝統的なインドの精神と伝統的な日本の精神をつないだ架け橋のようなものなのです。